LA5X/MM運用始まる

1989年12月16日(土)  15時20分 オーロラ号発

 15時20分から15時40分までのJA1BKの交信ではDXペディション一行の現在位置は、南緯38度51分、西経51度19分付近で、予定は全て順調に進んでいる。この時のオペレーターはF2CW。ジャッキーにJA1BKは、JF1ISTに対してのQSPとして「明日、22Zに14260MHzでスケジュールを持ちたい」と依頼した。今日のビーム方向は150度であった。

1989年12月17日(日)     7時 オーロラ号発

 DXペディション一行の現在位置は、南緯40度00分、西経48度00分付近で、波が高く船はゆれているが、予定は全て順調に進んでいる。
14260MHzより行われたスケジュールにはJA1BK、JA1UQP、JA2VPOがQSOした。今日のビーム方向は330度であった。

1989年12月18日(月)     7時 オーロラ号発

 DXペディション一行の位置は、日本時間午前5時に南緯42度50分、西経43度45分付近で、予定は全て順調に進んでいる。
今日のビーム方向も330度で、JA1BK、JA1UQP、JA1NRH、JA2VPO、JA9AAらが交信した。 
JF1IST藤原仁氏によると「船は大きくゆれているが、船酔いは楽になり食事は順調に取っている。今日はRTTYのリグのテストと50MHzのリグにメモリーをした後、梱包してしまう予定である。アイナーの話によるとQRVを始めた4ー5日はいろいろな質問をしないで欲しい、23日間の予定なのでみんなあわてずゆっくりとやってほしい。ログ用紙は12万5千局分用意している。」

1989年12月19日(火)     7時 オーロラ号発

 DXペディション一行の現在位置は、南緯43度58分、西経38度23分で、予定は順調に進んでいる。
今日の信号は少し弱いがJA1BK、JA1UQP、JA1NRH、JA1DWM、JF1XIDらが交信した。今日のビーム方向は330度であった。
今日の連絡は、JA1BKより50MHzのQRVについての質問から始まった。 JA1BKより「50MHzの周波数を発表しているのを変えて欲しい、こちらの希望は、CWが50100、ビーコンが50105、SSBが50115KHzに出来ませんか?」の質問に対しJF1ISTは「船が非常にゆれているが、航行には心配はない。左右と縦揺れのために荷物の梱包が遅れている。
気温はまだ寒いという感じはしないがこれからが大変だ。質問の50MHzの件は今日中にアイナーらオペレーター・ミーティングがあるのでその時には答えが出ると思う。」という返事を送ってきた。
交信の間が時々途切れるのは、本国とのテレックスのホットラインでノールウェーのDXペディション通信センターに連絡しているためにアマチュア無線は時々使用できないらしい。
その後、14時頃から15時まではLA1EEアイナーが運用していた。

1989年12月20日(水)   7時 オーロラ号発

 DXペディション一行の現在位置は、南緯45度22分、西経32度22分で順調に進んでいる。今日の信号も少し弱いがJA1BK、JA1HQG、JA1ELYらが交信した。
このまま順調に航行できれば12月25日18Z(日本時間12月26日午前3時)に到着する予定である。
今日の質問は「IC−750Aの117Vから240Vの電源変更をしたいので教えて欲しい」との事で、これについては今晩20時にスケジュールを組むことにして終った。
 20時に再びLA5X/MMは運用し本日の朝、質問した電源の改造についてJA1BKより教えてもらった後QRTしたが、今晩は信号が非常に弱くパスはZL方向であった。

1989年12月21日(木)    7時 オーロラ号発

 DXペディション一行の現在位置は、南緯47度06分、西経26度42分で予定は全て順調に進んでいる。
今日のビーム方向も330度であった。
JF1ISTからは次のように連絡してきた。 日増しに波が強くなり船は非常にゆれている。 今日、50MHzの周波数がビーコン:50105KHz、CW:50095KHz、SSB:50145KHzのように決定した。1430Zに50740KHzでオーストラリア方面のテレビ信号が59で入感した。続いて今日の連絡事項は3件ある。
1:CW運用の件については、パイレート防止のため最初にSSBで運用してアナウンスをした後、CWにQSYする
  ことを考えている。
2:第2キャンプには、上陸後10日以上はJF1ISTが運用することになると思う。
  その後、ヘリコプターが飛べるような天候になればジャッキーらもオペレーションする予定である。
  第2キャンプの装備はテント2張り、HF3エレ、50MHz5エレ、40/80のダブル・ダブレットの予定だが、ヒュー  ズ社の4人乗りヘリコプターはプロペラは木箱に、後部は船倉の倉庫にとバラバラにしてあるためにその組立が  6時間以上かかるのでどうなるかわからない。
3:到着時のベースキャンプについては、ヘリコプターを組み立てている間にボートで上陸して、テント10張と3エレ  を3本、バター・ナット2本を建設する予定もある。
 
その後、20時20分よりLA5X/MMは運用したが信号は余り強くなかった。

1989年12月22日(金)    7時 オーロラ号発

 DXペディション一行の現在位置は、南緯48度30分、西経20度20分で予定は全て順調に進んでいる。
JF1ISTからは「天候は曇りで船はかなりゆれている。今日初めて3ー4個の大きな氷山と遭遇、船長はあの氷山はブーベ島と同じぐらいだと冗談を言っていた。大きな氷山がかなり出てきたので船のスピードがおちるかも知れない。
上陸後のスケジュールは出来たら5ー6分は予定をしたいと思っているが、隊長のアイナーに相談する。上陸後、船は島の陰にかくれるのでVHFでのベース・キャンプと第2キャンプとの連絡も難しいと思うので日本とのスケジュールは必要だと思う。
今日は、6mのアンテナを船の甲板に取り付けてテストを始めている。「船がかなりゆれて交信がしにくいのでQRTする。」

 20時15分 オーロラ号発

 DXペディション一行の現在位置は、南緯49度30分、西経16度47分で、予定では12月25日14Zに接岸するが、上陸は26日の朝になるであろうとの話であった。

1989年12月23日(土)   7時 オーロラ号発

 DXペディション一行の現在位置は、南緯50度11分、西経14度09分で予定は全て順調に進んでいる。
JF1ISTからは「今日のミーティングで決定した事は、上陸後のスケジュールは現状報告をするためにも必要であるが、次の3点だけは守って欲しい。
1:特定の局と交信をすること。
2:スケジュールの周波数で、新たなパイル・アップをおこさないこと。
3:その周波数で交信リストを作らないこと。
以上の3点を守り、あくまでも業務用連絡のみとする。
そしてRTTYと160mの運用はベース・キャンプから1週間後になる予定。 
今日は、運用モード比率も次のように決定された。SSBが64%、CW36%で、オペレーターの割り振りはLA1EEがCW50%、SSB50%、LA2GVはCW20%、SSB80%、F2CWはCW90%、SSB10%、HB9AHLはCW10%、SSB90%、そして私JF1ISTはCW10%、SSB90%の予定ですが、CWの10%はロー・バンドに力を入れたいと思っている。
それから同一周波数、同一モードでは出来るだけ運用しないこと、5局同時運用したいとの予定は持っている。
最初の運用は10mか15mで予定もあるがそれはまた連絡する。
海はだいぶないで水平線がまっすぐ見えるようになってきた。
最後にジャッキーからの伝言で、そごうと三越にブーベ・ワインを売っているので交信が出来たらそれで乾杯をして下さいとの事でした。」

1989年12月24日(日)     7時 オーロラ号発

 DXペディション一行の現在位置は、南緯51度51分、西経7度43分で予定は全て順調に進んでいる。
今日のビーム方向は、最初南西方向であったが途中から北に変わり信号は非常に弱くなった。
JF1ISTは「外は嵐で雪、雨が混じり風が強く、船はかなりゆれている。
14260KHzは島に上陸した際の第1キャンプ、第2キャンプの連絡用に使用するために今後、日本との連絡はメインが14120KHz、サブが14140KHzでやりたいと思う。今後、リグ6台とリニア6台は島に近づくとオペレータの名前を書いて梱包してしまうため、船からはマリン用の送信機750Wを使用して連絡をする。上陸後の日本との連絡用としてメインをJA1BKに、サブをJA1UQPに登録する。島に上陸している間一時的に電波が途絶えることがありが、第一声はSSBでQRVすることになった。第2キャンプはLA2GVと行くことになるが、ヘリコプターで氷河の割れ目を調査をして安全が確認された場所に第2キャンプを設営する。
「最後に、今日は00Zから毎時に日本との伝搬テストを行いたい。」

 9時にLA5X/MMはQRVしたが、信号が非常に弱くなり今日の伝搬テストは中止になった。

1989年12月25日(月)   7時 オーロラ号発

 DXペディション一行の現在位置は、南緯54度36分、西経1度19分で予定は全て順調に進んでいる。
昨日までの信号にくらべ今日は非常に弱い信号の中でJF1ISTは「ブーベ島の到着予定は25日12Zの予定になった。80mの周波数が決定したので知らせます。CWが3502KHz、SSBが3612KHzになった。明日のスケジュールは22Zの予定にするが、到着し上陸準備のためにQRVが出来ないかもしれない。
みんなあわてず混乱せずにQSOしてほしい。
明日以後の事はどうなるかわからないので一応20Z、21Z、22Zにワッチしてみてほしい。」

23時:

 ZS8MIとのスケジュールで14120MHzに出ていたJA2VPOに対してLA5X/MMからのコールがあった。
JF1ISTは「25日13Zにブーベ島の海域に到着したが、今はブーベ島の南に停泊し、ヘリコプターを組み立てている。今後16、17Zに伝搬テストをしたい」と言ってQRTした。

1989年12月26日(火)       6時 オーロラ号発
 JA1BKにLA5X/MMからのコールがある。オペレーターはLA1EEでアイナーは「外は吹雪で、天気は非常に悪いので上陸はまだ出来ない、ヘリコプターの組立は終った。日本からのパスは220度ではなく105度であることがわかった。」

7時 オーロラ号発
 
 JA1BKにLA5X/MMからのコールがあるが今日の信号は弱い。
オペレーターはJF1ISTで「いま気温はマイナス3度で、そんなに寒いと思わないが、島はいま見えない。全島氷河に覆われ断崖絶壁で上陸は簡単にいかない。写真や資料で思っていたよりもすべてが違う。ヘリコプターで充分時間をかけて調査し、上陸は船長とヘリコプターのパイロットの判断にまかせる。 ベース・キャンプから日本へのビーム方向はショートパスです。ボートで上陸するときは充分に安全を確保する為に、ウエット・スーツに身を固めロボットのようにして行く。今後のスケジュールは11Z、14Z、22Zに設定する。

20時 オーロラ号発

 最初にJR1AIBが交信、その後JA1UQPにLA5X/MMからのコールがある。今晩の信号は、朝よりもまだ弱くなっている。
オペレーターはJF1ISTで「ヘリコプターは組立が終って、いつでも飛べる状態であるが、天候が悪いので飛べない。今度のスケジュールは14Zによろしく。」

23時 オーロラ号発

 最初JA1HQGがコールし、JF1ISTからは「ジャッキーが日本とはロング・パスでしか交信が出来ないと言っているのでそちらから英語で言って欲しい」とのQSPに対し、JA1HQGは英語で「ジャッキー、今のビーム方向は南西220度で信号は59+でショート・パスがオープンしている」との話にやっとジャッキーが納得、オペがJF1ISTにかわったところにJA1BKがブレークし、定時連絡が始まったころ信号は強くなってきた。 
JF1ISTは、風が変わったので島の反対側のケープ・バルデビアの方に避難をした。いま島はほとんど見えない、視界は80mで島までは800mの所に錨を降ろしている。船の気圧計が少しずつ高くなっているので天気はよくなっているように思う、明日には太陽が出るのではないかと話しているが、ヘリコプターは天候が回復すればいつでも飛べる状況にはある。
アイナーの話によるとピーターT世島よりも難しいと言っている。
もし運用すれば、ベースと第2キャンプとの連絡が出来ない時があるために7MHzと14MHzでは同一バンド、同一モードでQRVする可能性があるので注意して欲しい。
それから明日22Zのスケジュールは、もし天気がよくなればいま使用しているリグは梱包してしまうのでマリン用の無線機で運用する。
私は、視界が悪くベース・キャンプの発見が難しいときにはヘリコプターで第2キャンプに行った方が早いと思う。
又、ジャッキーからですがベース・キャンプには5エレ八木を立てるので日本とのロング・パスはOKだと言っている。

1989年12月27日(水)   7時 オーロラ号発

 今日の信号はすごく弱いがJA1BK、JA1UQP、JA1HQGらが交信。
JF1ISTは「暴風で横なぐりの雪が降っている、いま船の横を大きなクジラが横切って行った。
付近は真っ白で天候が回復してもすぐ悪くなる。船長の話では明日には晴れるのでないかと言っていた。
もし晴れればすぐにも上陸を実行をするが、詳しくは11Zと14Zのスケジュールを聞いてほしい。
ブーベ海域と南半球の天気図が欲しいのでアメリカの局にLA6VM経由で頼んだが、もし日本で情報があればお願いしたい。
船は島の陰に隠れているのであまりゆれていないので今日はいまから寝ます。

19時頃にアメリカから08Z(日本時間17時)に上陸したらしいとの情報が流れる。

20時
 スケジュール時間にJA1BKらが聞くが応答がない。

23時18分 オーロラ号発

 突然LA5X/MMがJA1BKをコールして連絡が始まる。
今晩のパスは南南西240度のショート・パスで信号は非常に弱い。
JA1BKからの「そちらの天気予報が入手できたので送ります。
いまブーベ島は2つの低気圧の中間にあり、雪を降らせていた最初の低気圧(976ミリバール)は東に動いているのでブーベ島はいまその端にいる。
次の低気圧(988ミリバール)は西経30度、南緯60度にいて強いので注意してほしい、980ミリバールの低気圧がゆっくりと進行してきたら2ー3日は天気が持つと思う。2つの低気圧の中心から中心までは約50度ある。今日までの気温をチェックするとわかるが、気温が一番下がってくる状態が一番いい天気です。ブーベ島に南風が入ってきた時には天気がよくなり、北風が入り暖かくなると低気圧が来るので注意してほしい。
低気圧はブーベ島の場合、南西からきて南東の方向に進行するが、一般にも言われているようにブーベ島の周辺は暴風圏で、常に吹雪で晴れることがほとんどない。今日は天気が回復していると思うが、このチャンスは短い時は半日ぐらいで終る。」
これに答えたJF1ISTは「アメリカからのウエザー・リポートは届いていないので大変参考になった。いまブーベ島の上半分は雲に隠れて全く見えない。船はベース・キャンプ沖800mの所に停泊しているが、船がゆれているのでヘリコプターが発着出来ない状態である。アイナーは144MHzのハンディー機をもって島の周辺をボートで調査に行っているが、人間が上陸できてもヘリコプターが飛べないので荷物が運べない。
日本の皆さん時間はまだ充分あるし、上陸はアマチュア無線を第1目標にしますから安心して下さい。
今後も22Z、11Z、14Zに運用します」

1989年12月28日(木)      7時 

 定時スケジュールのため待機していたJA1BKにJH1NBNからのブレイクよると「JF1ISTと昨夜0時頃(JST)交信し、16Zに上陸を開始する。これから先に22Zのスケジュールにもでてこなければ上陸を開始したと思ってほしい。」との連絡があった。
その後、JA1HQGより詳細な連絡が次のようにあった。
「昨夜、JA1UQPからの電話で14Zのスケジュールを聞いた後、ワッチしていると0時過ぎに突然JF1ISTからコールがあった。信号は終始59+でショート・パスの方向から入感し、いまミーティングをやっているので2時間ぐらい聞いていてほしいとの事であった。
その後、20分おきぐらいに運用してきた内容を知らせる。
ブーベ島から約400ー800m沖の氷山と島の岩陰に船を停泊した。
ベース・キャンプを設営する場所は後楽園の2倍ぐらいの広さに見える。
第2キャンプを設営予定の氷山の上に行くのは、危険度が非常に高いのでメンバーは行くのをためらっている。
共同作業なのであまり無理をしたくないと思う、ベース・キャンプから一番離れた所に第2キャンプを設営する可能性がある。そして、16時55分(UTC)ライフ・ジャケットが配られたのでこれで有坂さんとの交信を終り、いよいよ上陸が決行される。
まだ6時間は作業が出来るので22Zのスケジュールに出なかったら上陸したと思ってほしい。」

21時30分     オスロ発→JA1BK経由

 JA1BKより「オスロ発の情報が届いたので知らせる。
昨日の夜に私が、JF1ISTに話した際にアイナーは小さなボートで島の周辺を調査しているとの事であったが、その後、船に戻りミーティングを開き上陸を決定した。 そして、18時15分(UTC)にヘリコプターの第1便がLA1EE、JF1IST、F2CWの3人を乗せて飛び立った。その後ヘリコプターはリグ、アンテナ、発電機、マスト、テント、食料など全ての物を運んだが、発電機の燃料を忘れたために運用が出来ないようだ。燃料を積んでいなかったのに気付いたのが夜になってヘリコプターが飛べなくなってかららしい。
4人のオペレーターはブーベ島で夜を明かした。
この情報は今朝21ZにLA2GVとオスロとが連絡をとれ、ブーベ島に4人が上陸したことがわかった。 
私が調べたブーベ島の気象情報によると、昨日まで低気圧と低気圧の中間にあったブーベ島は最初の低気圧は通り過ぎて行ったが、次の低気圧988ミリバールのスピードが予想以上に早く24時間で25度も動いた為にブーベ島は今、低気圧の中間にあると思う。
この低気圧が通り過ぎるとその後には強い低気圧はないので天気がよくなると思われる。」