3Y1VCが多数のJAと交信に成功

 そして1978年も暮れかかった12月になって再びノルウェーの探検隊がブーベ島に上陸すると言うニュースが入った。
 そのメンバーに前回運用を行ったLA1VCとLA5DQが含まれ、LA1VCは通信設備、観測機械設置の任務であった。
3Y1VCは、1978年12月30日頃ブーベ島についたが、彼は島で本来の仕事を行っており、その合間にサービスをするといった状態であった。
QRVを開始して2カ月以上も経過するのにQSOはヨーロッパ、北米ばかり、現地では夏も終わり観測隊も離島する頃、日本では絶望感が濃くなった。
そんなときあの劇的なJA8DNZ小川氏と3Y1VCとのスケジュールQSOが行われた。小川氏はLA5NMに国際電話を掛け日本での状況を説明した結果、それを理解してくれたLA5NMはブーベ島まで衛星通信で連絡、それにより1979年2月25日ー2月28日にかけて主に小川氏のコントロールで約100局以上の日本の局が14MHzのCWで交信に成功した。
一方、LA5DQもSSBオンリーでQRVしたが、全世界で600局との交信で終った。
 その運用後、LA1VCよりJA8DNZ小川氏に届いた手紙の全文を紹介する。

ブーベ島の運用を省りみて de:LA1VC

”ブーベ島(ノルウェー語で Bouvet0ya)は、南緯54度24分、東経3度17分に位置しており、地球上で最も孤立した小さな島です。
地図では南大西洋上、アフリカの喜望峰と南極の Queen Mand Land のちょうど中間ぐらいにあります。
島の面積は約50kmと小さく、相対的緯度ではイギリスのロンドンとさほど変わらないのですが、ここでは完全に極地型の気候になっています。
島全体が氷と雪に覆われていて、海岸沿いは険しい崖ばかりです。
南極からの大きな氷山が、温暖な北の海へと消えていく、ちょうどその道筋にあたり、気温は夏でさえ平地で0ー5C程度です。
西からの風が年中吹き荒れていて、アザラシとペンギンの格好な住み家となっています。
こんな氷と岩だらけの孤島が、ハムの世界では、セパレートカントリーとしてもてはやされているなんて、とても面白いことです。
調査観測隊のメンバーである3Y5DQThore と私は、1978年12月に Bouvetに到着しました。
Thore は2日間滞在した後、南極大陸へ向かい、私がその後二ヶ月間この島に残ることになりました。
12月24日、私達は2日間の嵐がおさまるのを待って、ついに上陸することができましたが、当初は基地建設に忙しく、ハムの運用時間はまつたくありませんでした。
私たち5名からなる観測隊の主な目的は、大気圏気象観測でしたが、私は電子技術者として通信設備や観測機械の設置等を担当していました。
Thore は地質学が本業で、日中が勝負の仕事だけに、日没後はもっぱらハムの運用に励んでいました。
彼は Atlas 215 と Hy-Gain 18AVT を使って、離島するまでにSSBで約600局とQSOしましたが、残念ながら日本とは1局もできなかったようです。
彼が島にいた間、私はほんの数局と交信しただけでしたが、彼の離島後、運用する時間が多くなりました。
その後、私が Bouvet に滞在していた間に、次のリグをセットしました。
Icom-701 セパレート運用せざるをえなくなり、これをよく使いました。
Dentron MLA-2500 このリニア・アンプはメーカーから借り受けました。
その後、翌年1月末になって、NCDXF から贈られた Hy-gain TH6DXX を受け取りました。
そして、パイルアップしながら呼んでいる、全ての人々がどんな気持ちで、私の信号を聞いているのかが、よく分かりました。
リグのスイッチを入れてみると、私が電波を出していないにもかかわらず、多くの人が3Y1VCをコールしているのが常でした。
ひとたび私が電波を出すと、もの凄いドッグパイルが起きて、ちょうどバンド中がホワイトノイズだらけになったように思えたものです。 たった一つ残念だったのは、皆さんが私との交信を心待ちにしているのを知りながら、公務のため、しばしばQRTしなければならなかつたことです。
 でも今回は、DXペディションではなかったので、運用時間には制限がありました。

”1979年の3Y1VCとのQSOリスト

1/15.JA1TLK(21/CW),JA1JRK,JA8JL
2/25.JA8DNZ,JA8AA,JA8KB,JA8ZO,JA8ADQ,JA8AYN,JA8GU,JA8AWH,JA8MS,JA8JO,、JA8CDT,JA8FSJ,JA8GVF,JA8FKO,JA8JOR JA8EAT,JA8AKQ,JA8BIO,JA8HQI,JA8JL,、JA1VN,JA1HYF/1,JA0CUV/1
2/26.JA9CZF,JI1WIB,JA7DOV,JA5CAX,JA4ZA, JR1AIB,JA1IBX,JH1VRQ,JA1PNA,JA1MCU JF1PJK,JA1KF,JA2EIV,JA2HGA,JA2MGE, JA1UQP,JA7BJS,JA3GZN,JA2XW,JA3BQE,、JA3AQ,JA3BZC,JA3DY,JA3MNP,JA3CMD,、JA3APL,JA8MHG,JA1KSO,JH1EIG,JA1JAN 、JA1GTF,JH1ECG,JA2ITS,JA8CYU,JA8EPN JA8DNX,JA8DDO,JA1PMS,JA0SZ
2/27.JA8ESR,JA1BRK,JA1ELY,JA1BK,JA2JW,JA1BWA,JA8EL,JA8GZV,JA1BN,JR1AOQ,
JA1JWP,JE1BSD,JA8QX,JA3PFZ
2/28.JA6BSM,JA6GDG,JR1JFO,JA1NRH,JH1GZE JA2BY,JA2JSF,JA8HH,JH7IOS,JA1OCA,
JA1MJ,JA2AAQ,JA3BXF,JA3HZT,JA7ZP,JA7DRM,JA8FBH,JA8BKM,JH3QQC,JA6BVU
3/03.JA1IFP,JH1MCX,JA1BLC

 外に10数局程度の交信記録はあるが、日本ではSSBでの交信記録はない。

 このように1978年ー1979年の無人気象観測所の設置により、その記録の回収やメンテナンスのために、1ー2年に1回は上陸しなければならないことになった。

JUST ONE DAY AT BOUVET THIS TIME
On its return trip from Antarctica to home. the Norwegian Coast Guard vesselAndenes stopped for one day at Bouvet.
This 50 square kilometer island rankshigh on the DX'ers' list of wanted countries. It is populated by some 6,000 elephant seals and 120,000 penguins. Upon arrival, the ice-capped. mountainous island was bathed in sunshine. permitting the first photosever made of much of the whole island. Thirty minutes later it was its usual cloud-covered self. During the short visit,two automatically controlled radio weather station were installed and two of the three cabins were repaired. The third was filled with large rocks to keep it from being blownover in the heavy winds which are typical of the area.
One of the men going ashore was Kare Bartlian,LA5CF,but with the tight schedule there was no opportunity to get on the air. The photos serve to give you an acquaintanceship with 3Y until you get to work it next time.
その後、前文のように1985年2月28日、南極観測の帰途中にヘリコプターでLA4CGとLA5CFが一日だけ上陸したがQRVはなかった。
そして1988年3月9日、西ドイツの砕氷観測船 Polarstrern 号はブーベ島に接岸し、天候の回復を待ったが霧が深く上陸できなかった。
この時は、この船の乗組員であるスウェーデンのSM7DSEが3Y0FPでライセンスを取得していたが運用できなかった。